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マンハッタン市街戦

冒険小説
スティーヴン・マーティン・コーエン / 創元ノヴェルズ

 1991年、湾岸戦争が勃発したころのニューヨーク。この街に潜入していた3人のイラク人工作員が活動を開始した。人々が集まる場所に次々と爆弾が仕掛けられ、街は戦場と化す。

 彼らを狩り立てるのは──休職中だった敏腕刑事に、粗暴な爆発物専門家、そして謎の多いFBI捜査官。バグダッドの戦争に並行して繰り広げられる、ニューヨークでの戦争の行方はいかに?

 1997年の作品。都市を狙ったテロ、という素材のあまりにお気楽な扱い方に、9.11以前ならではの大らかさを感じる。もちろんアラブの大義だのアメリカの正義だのはどうでもよくて(なにしろ作者はこの作品をガイ・フォークスに捧げているのだ)、爆弾を仕掛ける3人と、それを追う3人との対決をアクション映画風に描いている。

 題材の扱いかたがお気楽に見えてしまうのは、緊迫したアクションの合間にバカバカしい(あるいは品のない)ギャグを挿まずにいられないという、作者の因果な性癖によるものだろう。

 特にカーチェイスの場面は爆笑モノ。行く手をさえぎるのは、愛と平和を説くハレ・クリシュナの信者の一団だったりするのだ。追う側も追われる側も、ハレ・クリシュナの皆さんを平気で巻き添えにして銃撃戦を始めてしまう。

 そういえば、作中に登場する映像解析システムは、ハーポとチコとグルーチョという名前の3台のコンピュータで構成されているのだ。根っからのギャグ好きであろう。

2005/12/22(木) 狼の帝国

日常

[]狼の帝国 / ジャン・クリストフ・グランジェ

さっき読み終えた。たいへん興奮している。

ISBN:448821407X

ついこの間まで「今年のベスト」を選んでいたわけだが、これは来年のベスト有力候補だと断言してしまうくらいに興奮している。

『クリムゾン・リバー』の机の並べ方に随喜の涙を流した人、『コウノトリの道』は面白いけどまともすぎやしないかと思った人には、心の底からお薦めしたい(どっちも自分のことだ)。

彼は自分がスポンサーよりも抜け目がないと思い込んでいた。操られるのではなく、操ることができると思い込んでいたのだ。(p.303)

そうなっていたかもしれない。二〇〇一年九月十一日のことがなければ。(p.316)

……という文章からもうかがえるように、マクロなスケールの妄想と、個人レベルの不安感とが綺麗に重なり合う、きわめて水準の高い陰謀小説である。

このへんもあわせて読むといいだろう。

特に『陰謀と幻想の~』を先に読んでおくと、例えば次のような一節に激しく興奮できる。

〈灰色の狼〉はその失われた大陸を夢見ているのです。(p.443)

すごいよこれは。どうしましょうか。

2005/12/18(日) DVDなど見て過ごす

日常

チーム・アメリカ

ISBN:B000BEYC7M

 某氏から「ぜひ見た方がいい」「というか、どうしてまだ見てないんですか!」と叱責されるような勢いで薦められた。

 ルーブル美術館やピラミッドを吹き飛ばしながらテロと戦うチーム・アメリカの物語。彼らの行く手を阻むのは、リベラルなハリウッド・スターたちにマイケル・ムーア。そして真の黒幕は……金正日!

 コメディとして非常に楽しめた。政治的な立場に関係なく、なんでも笑いの対象にしてしまう爆走ぶりがすばらしい。下品さのぶち込み方もよい。

 ちなみに、金正日は絵に描いたような悪の将軍様として活躍する。金正日といえば韓国から映画監督を拉致して怪獣映画を撮るくらいの映画好きであり、ここまで映画の中で大活躍させてもらえたのだから本望だろう。

 ところで、作中で開催される国際式典には日本の代表も出席しているのだが、これって天皇陛下かなあ?

満州帝国崩壊 -ソビエト進軍1945-

ISBN:B000AHQFSE

1982年のソ連映画。1945年8月、満州に侵攻したソ連軍と日本軍の戦いを描く。……といってもプロパガンダ色は意外と希薄で、娯楽性が強い。

 素人考えだと、昭和20年の日本軍なんてもはや戦争どころではないようにも感じられるのだが、作中ではけっこう健闘してソ連軍を苦しめていたりする。ソ連側の補給の痛いところを突いてみたり。自分たちは補給を軽視していたわりに、他人の補給には敏感なのだ。

 ちょっとおかしかったのが、ソ連軍に捕らえられた日本兵。彼は日本語で「万歳日本! 万歳日本! 花は桜木(?)、人は武士!」などと叫んでいて、士官が通訳に「彼は何と言っている?」と尋ねると、通訳は「大日本帝国は不滅だ、と」……往年のアカデミー出版みたいな超訳である。

 ほか、セミョーノフ軍の残党なんてのが出てくるのには少し驚いた。セミョーノフ軍って、ロシア革命の時の反革命側の部隊ではなかったか。ちなみに私は白系ロシアというとすぐに「聖アレキセイ寺院の惨劇」を思い浮かべる、引き出しの少ない人間である。

 T34がバカみたいに出てくるのでその筋の人にはおすすめ。

2005/12/17(土) 忘年会その2

日常

ミス連忘年会

 正式名称は「早慶交歓会」だったような気もする。年々、現役よりもOBが多くなっているような……。

2005/12/14(水) 忘年会その1

日常

ミステリ忘年会

翻訳者の方々が中心になって開催している忘年会。今年は書評家方面の出席者が異常に少なかった。大森望さんが「これは何かの陰謀で、我々は仲間はずれにされたのだ」という説を提唱していた。