ようこそゲストさん

Bookstack

2004/12/05(日)

日常

結婚を祝っていただいた

祝ってくださったのは、逆密室関係者をはじめ、ミステリ関連の友人知己の皆さん。

会場は焼肉屋。幹事に「なぜ焼肉?」と聞いてみたところ、「だって古山さん北朝鮮ネタ好きじゃないですか」と予想通りの回答が。北朝鮮はいま、焼肉どころではないはずだが。

途中、幹事の指示で、妻ともども生肉をもって各テーブルに赴き、肉を焼いて回った。キャンドルサービスならぬ焼肉サービス。 私の周辺は妙なことを考えつく人がたくさんいるので楽しい。

逆密室恒例・結婚記念文集も、作られる側に回ってみると感慨深いものがある。逆密室の面々による連作バカミスは素晴らしいできばえでありました。

ご出席いただいた皆さま、文集をつくってくださった皆さま、幹事を引き受けてくださった方々、ほんとうにどうもありがとうございました。

火星の土方歳三

SF
吉岡平 / ソノラマ文庫

 手に取ったきっかけは、この強烈な題名だった。火星の土方歳三。志茂田景樹の怪作『戦国の長嶋巨人軍』と同じ形式である。

 五稜郭で戦死した土方歳三が、バローズ描くところのバルスーム──火星に転生するというお話。史実でも刀振り回していた土方歳三にとっては似合いの舞台だろう。

 「捕らわれた牢獄の中で力強い味方に出会う」なんてのをはじめ、バローズがよく使っていたパターンを再利用して話を組み立てている。舞台が似通ってるだけじゃなくて、ストーリーにも「らしさ」が生まれている。新撰組のエピソードとして伝わっている話をアレンジして取り入れてみたり、細かい工夫も行き届いている。「火星シリーズ」という原典を踏襲しながら密着しすぎない、バランスの取れた作品だ。

 舞台と主人公がしっくり馴染んでいるおかげで楽しく読めた。題名からすると際物に見えるけど、『戦国の長嶋巨人軍』と一緒にしてはいけない(『戦国の~』は楽しいと言えば楽しいのだが、際物以外の何者でもない)。

※2008/01/03追記:いま試しに『戦国の長嶋巨人軍』のリンク(amazon行き)をクリックしてみたら、\6500~\7000という気が狂ったような値段が付いていた。戦国で長嶋で巨人軍なわけだが、よく考えてほしい。

パーフェクト・コピー

SF
ASIN:4591083500アンドレアス・エシュバッハ / ポプラ社

イエスのビデオ』の作者によるジュブナイルSF。

ヴォルフガングは15歳。親にいわれるままにチェロの練習に励んでいたが、ある日「これは本当に自分のやりたいことなんだろうか?」という疑問を抱く。そのころ、キューバの科学者が「16年前にクローン人間を作った」と発表する。そして、ヴォルフガングもクローン騒動の渦に巻き込まれてゆく……

親の敷いたレールに疑問を抱く若者、というジュヴナイル向けのまっとうなテーマを、クローン人間という素材を使って描いている。

主人公が思いを寄せる女の子は、腕っぷしも強い優等生とつきあっている。そんな彼女が、少々引っ込み思案の変な奴である主人公のほうを振り向いてくれる、という実にありがたい展開も待ち受けている。このへん、想定される読者層にあわせたような気がする。

ところで『イエスのビデオ』ではソニー製品を異常なまでに堅牢にしてしまった作者だが、今回も少々無茶をしている。もっとも、ほぼ全編を世間知らずの15歳の少年の視点で統一しているので、無茶もうまく包み込まれてはいる。

伏線があからさまではあるけれど、まずまずまっとうに楽しめる娯楽作品。

ゴースト・ハンターズ

ホラー
ASIN:4125008671尾之上浩司監修 / 中央公論新社

 ホラー・アンソロジー。序文では、『吸血鬼ドラキュラ』のヴァン・ヘルシング教授や、ホジスン描くカーナッキなんぞの名前が挙がっているけれど、ここに登場するハンターたちはいささかクセモノ。

収録作

デスメイト-死は我が友 / 山下定

 このアンソロジー中では、いちばんオーソドックスなゴースト・ハンターかもしれない。ほかは名探偵とかガンマンとかホームレス狩りの少年だったりするので。
 「敵」があまり印象に残らないのが残念だけれど、異様な主人公の描写は面白い。

「スマトラの大ネズミ」事件 / 田中啓文

 「赤毛連盟」ばりの怪しい新聞広告あり、ホームズの失踪を心配するワトソンあり、ホームズに関する新しい解釈あり、という正統派のホームズ・パスティーシュ。「スマトラの大ネズミ」の正体は、その気色悪さも名前の由来もこの作者らしい。

ゾンビ・デーモン / 友成純一

 毎度おなじみの流血肉汁臓物祭り。とてもいい加減なエピローグがついていて、他の作品だったら怒るところだが、この場合はたいへん似合っていて素晴らしい。

「根無し草」の伝説 / 菊地秀行

 19世紀後半、開拓時代のアメリカ。 ある幽霊屋敷の謎に挑むガンマンたちの物語。物語の全貌がなかなか見えてこないけれど、特技や個性のはっきりしたキャラクターたちの駆け引きが楽しい。「凄腕」どうしの勝負の場面は、作者ならではの読ませるできばえ。