■種々の雑用に追われて
読みかけの本はほとんど読めず。
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元サンリオ文庫の復刊。訳者・大瀧啓裕の“固有名詞の音は原語の音に可能な限り近づける”方針は本書にも適用されているようだ。
Dalzielを「ダルジール」と表記していたけれど、後になって実は「ディーエル」だと判明した……なんて例もあるので、考え方としては理解できる。
ただ、訳者あとがきをざっと見ると、著者名の「ウィルソン」を本当は「ウィルスン」としたかった……なんて書かれていて、私にはずいぶん細かいように思えた。
満足。これは大賞受賞がすんなり決まったのもうなずける。キャラクターの動かし方が実に巧みなのだ。詳細はtopicsを参照。
「ズッコケ三人組」シリーズの作者による、「太平洋戦争に勝った日本」を舞台にした改変歴史物。
ミッドウェーで勝利を収めた日本は、その後アメリカと講和。戦後も「大東亜共栄圏」を維持している……が、その支配体制は揺らいでいた。中国や東南アジアでは反日紛争が続き、日本軍はベトナムへの原爆投下を検討する……という、レッドサン・ブラッククロス初期案のような暗黒世界である。
主人公は、たまたまこのパラレルワールドに迷い込んでしまった小学生。なので上記のような世界情勢は伝聞の形でおぼろげに伝えられるだけ。全体主義社会に放り込まれてしまった恐怖感と、そこで生きてゆこうとする意志を中心に描いている。
冒頭には憲法第九条が引用されているという、今では煙たがられそうなモノではあるが、改変歴史物に関心のある向きなら目を通してもよさそう。
もともとの問題提起についてはあまり関心はなかったけれど(同時期の『容疑者X』の隠された真相のほうが面白かった)、他の方々の意見は興味深く読んでいました。
1962年、ビートルズはブレイクを目の前にして解散した。それから25年。かつてのメンバーでただ一人それなりに成功を収めたポールは、自分の原点だったビートルズを甦らせようとするが……という歴史改変もの。
南北に分断された日本を描いた佐藤大輔『征途』は、同時にハインラインやティプトリーJr.がSF作家にならなかった世界を描いた小説でもあるのだが、「この世界のSFはどうなってしまうんだろう」ということが気になった覚えがある。
ちなみに本書では、ビートルズが存在しなかったために、イギリスの歴史そのものが変わってしまっている模様。