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2004/02/03(火)

日常

本にまつわる連想

今週は書店が開いてる時間に帰宅できそうにないので、昼休みに職場近くの書店で時間を潰し、本を買い込んで帰る。

S.J.ローザン『苦い祝宴』ISBN:4488153062 , ラース・フォン・トリアー『ドッグヴィル』ISBN:4048973320 , 田雁『ブラックチャイナ』ISBN:4901784293 などなど。

最後の『ブラックチャイナ』の副題は「規範なき大陸の暗黒年代記」。このサブタイトルにつられて買ったと言っても過言ではない。

もうすこし自分の思考をふり返ってみると、

#「大陸」「暗黒」の文字を見る

#マイケル・スレイド『暗黒大陸の悪霊』ISBN:4167661462を連想

#小説の舞台はバンクーバー

#同じ街が舞台の馳星周『ダーク・ムーン』ISBN:4087745589 を連想

#『ダーク・ムーン』に限らず馳星周の小説には中国系の犯罪者がよく出てくる

#『ブラックチャイナ』

#おお、つながった!

冷静に考えてみると、連想がつながったからといって購入すべき理由はまったくない。だが、それでも買った当人は納得できてしまうのがマイケル・スレイドの恐ろしいところである。

ところで『暗黒大陸の悪霊』といえば、人と話しているときに何度か間違えて『暗黒大陸の浮気娘』と呼んでしまったことがある。「浮気」は『暗黒大陸の悪霊』という物語のキーワードのひとつでもあるのだが、間違いの理由はもちろん『暗黒太陽の浮気娘』ISBN:4151000100 だ。

『暗黒太陽の浮気娘』の舞台はSFファンの祭典。会場で起こった殺人事件に、新人作家が奇策を用いて謎解きに乗り出すというお話。舞台設定でSFファンの気を引きつつ、この奇策が昔のミステリへのある種のオマージュにもなっていて、そちらがお好きな人のハートもわしづかみ、という素敵な作品だ。

 ……こう書くとなんか傑作みたいだな。いや、私は傑作だと思うのだが。ミステリとしては別にたいしたことはないし、ベスト選びのたぐいに名前が出てくることはまずないだろうし、感動的でも衝撃的でもなければうまさが際立つわけでもない。とはいえ面白かったから忘れることもなくて、時々思い出しては愉快な気分になる──そういう慎ましやかな傑作である。バカバカしくてくだらない話なんだけどね。

2004/02/02(月)

日常

受賞

桐野夏生『OUT』がいつのまにか英訳されていて、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)のエドガー賞にノミネートされたそうだ(→http://www.nsknet.or.jp/~jkimura/edgar04.html)。

ほかの分野に比べると、日本はミステリに関してはこれまで圧倒的に輸入超過であったわけで、そういう中での「日本発」の成果として非常に喜ばしいことである。……なんてことは別にどうでもいいのだが、もしも受賞したら、桐野夏生は江戸川乱歩の名を冠した賞とエドガー・アラン・ポオの名を冠した賞の両方を受賞した、稀有な例になるわけだ。

※追記:残念ながら受賞にはいたらず。

2004/01/30(金)

日常

パーティー

柳原慧さん『[key
パーフェクト・プラン]』:ISBN:4796638113
村上貴史さん『[key
ミステリアス・ジャム・セッション]』:ISBN:4152085444

の出版記念パーティー。

小さな会場に出席者がぎっしり、という状態で、このミス大賞の授賞式に続いて2週連続でお会いした方も多かった。

幹事の杉江さんに「あっちで逢坂剛さんとトマス・ウォルシュの話をしてるからおいで」と呼ばれていってみれば、いつのまにか話題は西部劇に移っていた。とはいえ、私が西部劇ことをほとんど知らないにもかかわらず、楽しいお話だった。知らない分野のことなのに面白く聞けるのは、逢坂さんに膨大な知識(と楽しんだ記憶)の蓄積があればこそ、なのだろう。

翻訳家の高野優さんと、ジャン・ヴォートランetc.に関していろいろお話できたのが個人的には嬉しかった。

その後残った人々(主賓のお二人も)は朝までカラオケ。帰宅したのは翌朝8時近くで、土日はへろへろ。

2004/01/29(木)

日常

陰謀

いま、ある編集者を精神的に追い詰めるための陰謀に荷担している。以下の文章もその謀略の一環を構成するものである。

かつてイギリスにP.G.ウッドハウスという作家がいた。日本語に直訳すると「林家」……ではない。綴りはWoodhouseではなくWodehouseだ。

英語圏のミステリでは、しばしば言及される名前だ。クイーンやクリスティーなんてところから、現代のピーター・ラヴゼイやコリン・デクスターの文章にも名前が出ていたような気がする(記憶をもとに書いている。確認したわけではないので、間違っていたら申し訳ない)。すぐれたユーモア作家として、今もなお盛んに読まれているようだ。

ミステリの観点からの紹介は、『名探偵ベスト101』のジーヴスの項を参照していただきたい。

ウッドハウスの邦訳書誌は、こちらが詳しい。→ http://www1.speednet.ne.jp/~ed-fuji/X2-wodehouse.html

そちらの記述からも分かるとおり、今の日本で簡単に読めるのは、いくつかのアンソロジーに収録された短編くらいだ。私も、そういうアンソロジーの短編でしかウッドハウスを知らない。

そんなわけで上記のサイトには、こう書かれている。

「来るべきウッドハウス復権の時に備えて、過去の翻訳状況を取りまとめてみることにした」

 その時が来る。

 ウッドハウスの本を出すのは文藝春秋。編集を手がける予定のNさんは、ふだんはジェイムズ・エルロイやボストン・テラン(そう、「このミス」2003年版で海外編1位を制した『神は銃弾』だ)といった殺伐とした本を世に送り出している。もっとも本人は殺伐とはしていないので、向かいに座った客といきなり喧嘩をはじめるようなことはしない(と思うが断言はできない)。

 Nさんは、大学の推理小説同好会の先輩にあたる。

 この会では、毎週1回、メンバーが回り持ちで本を選んで行う読書会が定例行事だった(今でもそうだ)。今から12年前、当時大学1年の私がジェイムズ・エルロイという作家のことを知ったのは、Nさんが読書会の課題作に選んだ『血まみれの月』がきっかけだった。席上でNさんが配布したレジュメ──主人公ロイド・ホプキンズの異常性を手がかりに、現代ミステリにおける探偵像の変化を論じていた──が今でも印象に残っている。その後Nさんは出版社に就職し、いまではエルロイの本を手がけている。

 エルロイに傾倒した若者が、やがてエルロイの邦訳の刊行に携わる──なかなかいい話である(問題はエルロイに「いい話」が似合わないことだ)。

 ちなみに、私がはじめて解説を書いた『けだもの』の担当もNさんだった。人狼ホラーという形式にノワールとしての貌もあわせ持つ名作で、これほど血と内臓が飛び散る恋愛小説はそうそうないだろう。こういう素敵な作品の解説を書くことができたのは、本当にありがたいことだと思う。

 これまでNさんが手がけた本は、「スプラッタパンク」「パルプ・ノワール」といったラベルを冠していることが多い。現代の海外エンターテインメント小説の中でも、いささか尖った領域と言えるだろう。それが今度は、古典と呼んでも差し支えないであろうウッドハウスだ。

 尖鋭から復古へ。どのような本が世に送り出されるのか、楽しみに待つことにしよう。

 ……これは文春の宣伝じゃないか、だって?

 そんなことはない。

 これは陰謀なのだ。何の非もない編集者にプレッシャーをかけて、精神的に追い詰めようとする卑劣で邪悪な策略なのだ。そういうことにしておいてください。

2004/01/28(水)

日常

ファンタジー

太陽の塔』も読了。いい小説だが、ファンタジーではない。

なんでファンタジーノベル大賞なのにファンタジーじゃないんだゴルァ!

……と思ったが、「このミステリーがすごい!」大賞で『四日間の奇蹟』を推したことのある(http://www.konomys.jp/02kono/comment/009.html)者にそういう文句を言う資格があるかどうか怪しいので、とりあえず言わないでおく。

第15回日本ファンタジーノベル大賞の選評(http://www.shinchosha.co.jp/fantasy/)を読んだところでは、「ファンタジーであるかどうか」を意識していたのは荒俣宏だけのようだ。小谷真理にそういう意識がなかったのは少々意外だが、そんなことはどうでもいいのだ! というくらい気に入ったことが選評から伝わってくる。