ようこそゲストさん

Bookstack

メッセージ欄

『[読了]』 で検索

2006/01/17(火)

日常

[]チーム・バチスタの栄光 / 海堂尊

満足。これは大賞受賞がすんなり決まったのもうなずける。キャラクターの動かし方が実に巧みなのだ。詳細はtopicsを参照

[]屋根裏の遠い旅 / 那須正幹

「ズッコケ三人組」シリーズの作者による、「太平洋戦争に勝った日本」を舞台にした改変歴史物。

ISBN:4036522906

ミッドウェーで勝利を収めた日本は、その後アメリカと講和。戦後も「大東亜共栄圏」を維持している……が、その支配体制は揺らいでいた。中国や東南アジアでは反日紛争が続き、日本軍はベトナムへの原爆投下を検討する……という、レッドサン・ブラッククロス初期案のような暗黒世界である。

主人公は、たまたまこのパラレルワールドに迷い込んでしまった小学生。なので上記のような世界情勢は伝聞の形でおぼろげに伝えられるだけ。全体主義社会に放り込まれてしまった恐怖感と、そこで生きてゆこうとする意志を中心に描いている。

冒頭には憲法第九条が引用されているという、今では煙たがられそうなモノではあるが、改変歴史物に関心のある向きなら目を通してもよさそう。

2006/01/16(月)

日常

[]獣の夢 / 中井拓志

大変満足。J.G.バラードの『殺す』あたりの先に踏み込んだ作品、と感じた。「空気読め」というときの「空気」にまつわる物語、とも言える。

猟奇犯罪を犯す側よりも、それを了解しやすい「物語」として受容する世間の側を描いてみせた作品。

2006/01/14(土)

日常

[]幸運は誰に? / カール・ハイアセン

きわめて精緻に組み立てられたバカなお話。メインの宝くじ争奪戦に加え、田舎町の「奇蹟」ビジネス(涙を流すインチキ聖母像などなど)や広大な森林をめぐる買収話などが絡み合うプロットは決して単純なものではないが、個性の強いキャラクターのおかげで分かりやすいものになっている。

それぞれのキャラクターが好き勝手に動き回っているようでいながら、最後はパズルが完成するかのように個々のサブプロットが落ち着くべきところに収束する。八方破れに見えて、実はしっかり計算されている。読む側はその巧妙さに圧倒されることもなく、バカバカしく愉快な展開を楽しむばかり。

世の中、上手いけれど上手さが目立ってしまう作品も多い(私にとってはトマス・H・クックの一連の『~の記憶』なんかがそうだ)。それに比べると、もはや技巧を読者に意識させないのがハイアセン。素晴らしい。

2006/01/12(木)

日常

[]奇妙な情熱にかられて / 春日武彦

ミニチュア/境界線/贋物/蒐集 というキーワードに沿って、引用してみたくなるような風変わりなエピソードや小説の一部分をいくつも並べている。この本自体がある種の蒐集の産物と言えるかもしれない。

2006/01/10(火)

日常

[]喉切り隊長 / ジョン・ディクスン・カー

大いに楽しんだ。ナポレオンの時代を舞台にしたスパイ小説としてもたのしめる。最後に明かされる真相にいたっては、本格ミステリのものというよりは、むしろ国際謀略小説のものだろう。それにしても宮部みゆきの某作品みたいな趣向である。

ISBN:4150703620